風景画

市場(中国 新京近く) 1935年

御室展望 1949年


ランバン(青年騎士像) 1967年

ベニス 1974年

ポンテ・ベッキオ 1965年


パリ屋根 1968年

モロッコ(旅人)1974年

モロッコ(バザール)1974年


モンセラと聖堂 1976年

葛城山 1977年


雪の大原 1983年以前

雪の洛北 1983年以前

雪の橋立 1986年


雪景伊吹山 1987年(滋賀県立近代美術館)

花脊の雪 1992年

雪の飛騨路 1992年


 「市場(新京近く)」(1935年)は現存する唯一の戦前の作品で、今井憲一氏と満蒙地方に写生旅行訪れた際の、画家24歳のときのものである。1981年に回顧展を開催するに当たって、カタログ用写真を撮っていた最終日、偶然にも親戚からこの4号のスケッチが届いたという。「つたない作品で恥ずかしいが、唯一の戦前の作品として陳べることとした」と図録にある。

 

 同じ図録で、画家は1935年頃の作品に愛着があったと述べているが、それらの作品は画家の出征中に、自宅が強制疎開(砲弾による延焼を避けるための建物の強制的な取り壊し)に遭い、失われてしまった(関時之介, 1980,安田謙画集)。

 

 戦後の高度成長時代に入ると、まだ渡航制限のあった1963年には商社の人々と、70年代に入ると60歳前半に中村善種氏と、あるいは学生を引率して、もしくは個展の開催をかねて、毎年、ヨーロッパへ1~4ヶ月の写生旅行に出かけた。この経験はドン・キホーテシリーズなどの大作にも大きな影響を与え、ヨーロッパ各地や北アフリカで出会った風景や人々が、再構成して画面に取り入れられている。 

 

 晩年には、底冷えのする冬の洛北や飛騨地方に好んで足を運び、里山や雪の積もった山々をスケッチした。厳しくも優しい冬の風景として残されている。